株式会社クスリのアオキホールディングス
髙神夏樹さん(経営管理) 39歳
単身赴任で気づかされた家族と地元の大切さ。石川に戻り、ドラッグストアのM&A戦略担当に。
地方ディーラーから大手コンビニチェーンに転職し、エリアマネージャーに最速で昇進するなど、ヘッドハンターからも声がかかる活躍で仕事に邁進してきた髙神さん。
しかし、その次の転職で東京への単身赴任が始まると、「人として、父親として、この働き方と生き方が自分にとって正しいのか」という思いが湧き上がり、半年ほどで家族が暮らす地元石川へUターンした。
働くこと、そして人生の価値観がガラリと変わったという髙神さん。「転職した人が、『大切なのは年収や会社名じゃない、自分と家族が豊かさを感じられるかどうか』と語る意味が初めて分かった」と、自身の転職ストーリーを振り返った。
※本記事の内容は、2022年9月取材時点の情報に基づき構成しています。
- 過去の
転職回数 - 3回
- 活動期間
- エントリーから内定まで63日間
転職前
- 業種
- 小売業
- 職種
- 管理
- 業務内容
- 経営企画室、事業体制構築
転職後
- 業種
- 小売業
- 職種
- 管理
- 業務内容
- 経営戦略、M&A新規案件担当
自分の大切なものが何か気づいたとき、仕事観がガラリと変わった。
現在のお仕事はどんな内容ですか?
クスリのアオキは石川県白山市に本社がある北陸最大手のドラッグストアチェーンです。入社して4カ月間は店舗で現場研修を行い、その後、M&A企画課に配属になりました。
当社では地場のスーパーマーケットとの合併を進めて、スーパーマーケット+ドラッグストア(フード&ドラッグ)という新たな形態でワンストップショッピングの提供を実現しようと、事業展開を図っています。近くて便利、というのはコンビニにも当てはまりますが、スーパーとドラッグストアの組み合わせは利便性と専門性を備えた店舗の実現になります。
当社は現在、岩手から大阪までのエリアで約850店舗展開しているのですが、全国でこのフード&ドラッグを増やしていきたい。その実現とお客様の利便性向上を推進するために、M&Aの新規案件獲得業務を担当しています。
入社前のご経歴を教えてください。
石川県で生まれ育ったのですが、母子家庭の中で私が15歳の時に母が病気になったこともあり、大学進学は叶いませんでした。最初は北陸の自動車ディーラーに入社し、全国新人賞を獲得したり、販売数や接客スキルを競う大会では北陸地区で3年連続1位にもなれました。
その後、さらに業界トップの景色を見てみたいと思っていたとき、縁あって大手コンビニへ2012年に転職しました。1年店舗勤務をし、すぐにSV(スーパーバイザー)の立場になり、約4年でエリアマネージャーに昇格。現場だけでなく、本部と現場を繋ぐ仕事をしていました。
SV、マネージャーと、年齢・社歴の割に早く昇進昇格できましたが、私は本当に運が良くて、周りのオーナー様、従業員の皆様、上司、仲間に恵まれて、育てていただけたお陰です。今でも心から感謝しています。
10年勤務し、フィールドを変えようと再び転職。退職意志を伝えた際に、いろいろなオファーを頂きましたが、自分自身で転職先を探して、こだわりの食材や料理キットの通販・宅配サービスを手掛ける会社に転職し、家族を石川県に残して東京に単身赴任しました。
転職のきっかけは?
家族と離れて暮らし始めてすぐに、家族も自分もストレスで心身に負担を感じるようになりました。すると、今までそんなことを考えたことも無かったのですが、「私は地元が大好きで、地元に育ててもらっていたんだ」という感覚が湧いてきました。
そして、家族が常に傍にいる感覚は当然だと思っていたのですが、家族と離れた環境になって初めて、私個人で頑張ってきたわけではなく、家族のサポートがあったお陰で今まで仕事ができていたということに、この歳になってやっと気付けたのです。
それまでは、自分の仕事観は会社名や年収が目安になっていたと思います。大学に行けなかったという悔しさがそこに表れていました。
過ちに気付き、「人として、いち父親としてどう在りたいのか?」を考えたとき、「妻に子育てを任せたまま、子どもの成長を見ずに、子どもが勝手に大きくなったという感覚を持って生きていっていいのかな」と思ったのが、地元に、好きな場所に戻ろうと決意した一番の要因です。当時、子どもは8歳、6歳、4歳。コロナ禍真っ最中で、会いに帰ることもできない状況でした。
つまるところ、人の心を取り戻したから帰ってきた、という感じですね。私は人というものを観念、感情、思考、行動の4段階に分けて考えているのですが、これまでの自分は観念、感情が間違っていたから家族を軽視する思考になっていたし、そういう行動になっていたのだと思います。そのことにやっと気付かされました。
また、多種多様、様々な企業様から声をかけていただいたり、戻ってこいと言われたりする中で、仕事は一人でやってきたわけではなく、チームでやってきたものであって、かなり自分を過信していたなとか、傲慢だったなとも思いました。そのような思いに至り、中途半端な気持ちで働くわけにはいかないと考え、半年で前職を辞め、改めて転職活動を始めました。
転職活動はどのように進めましたか?
最初は大手転職支援会社に登録しました。有名企業からのオファーもいただきましたが、年収や会社名を見たら期待に胸が躍る求人ではあっても、自分の価値観が今までと変わっていたので判断基準はそこではないなと考えていました。
これからは地元、石川県の会社で働きたいと思ったので、ネットで「石川県 転職」と検索したら、リージョナルキャリア石川(運営会社:株式会社エンリージョン)が出てきて、軽い気持ちでエントリーしました。そこでコンサルタントの小林さんという、本当に素敵な方とのご縁をいただけました。
小林さんと話をする中で改めて、好きな場所で思いきり働くということの意味を説いてもらったという感じでした。
今の会社に決めたポイントは?
小林さんが、当社の採用担当に直接連絡をして、私のことを「めったに採れない人材で絶対に会うべきだ」と言ってくださったんですね。それで面接の機会をもらって、内定、採用に至りました。
これまでもヘッドハンターの方と関わったことがあるのですが、その中でも小林さんは本当の意味で企業と人を繋ぐ人だなと感じました。小林さんにお会いできたこと自体、運が良かったし、小林さんに勧めていただいたことでこの会社に縁ができたと思っています。
年収やブランド以上の価値が、地元にあり、家族と過ごせることにある。
転職していかがですか?
これまでの仕事も業界としては小売りなので、外部からクスリのアオキを見ていたときは、会社の強みはフード&ドラッグだということと、変化対応の早さに力強さやうらやましさを感じていたのですが、実際に入社してみて、そこは社長が率先して動いているからこその強さ、実行力だということが分かって、非常に驚きました。
トップがこんなに背中を見せて働く姿勢を実際に見て、ここに入社して良かったなと感じましたね。あとは社員の皆さんの会話からは地元の言葉が多く聞こえてくるので、そこに安心感を覚えたりもしています。
転職して良かったと思うことは?
一般的には、年収がダウンする企業への転職はためらってしまうと思うのですが、それ以上の価値が地元にあり、家族と過ごせることにある、ということを感じています。
よく転職者インタビューなどで、「会社名や年収じゃないんです」と話す方がいますが、自分はその意味が今まで分からなかった。正直なところ「何を言ってるんだよ」くらいに思っていたんですが、今はその意味が分かる。やっぱりそうなんだ、と思いますね。転職で失ったものもあるけれど、人として取り戻したものはとてつもなく大きいです。
困っていることや課題はありますか?
仕事としては、これまでの経歴からすると畑違いのことをやっているのですが、それも自分自身が変化に対応していくために、今は必要なことだなと思って向き合えているので、深く悩んだりはしないですね。
小林さんが入社後も連絡をくださるので、話を聞いてもらえるのもありがたいです。転職先が決まったら、そこで関係は終わりかと思っていたので、入社後も気にかけてくださるのは素晴らしいなと思いました。
生活面での変化はありましたか?
生活はかなり変わりました。妻も働いているので育児も分担するようになって、そうすると子どもも妻も安心するようになったのか、怒ることが減りましたね。当たり前のことなんですけど。
子どもから「パパがいなくて、休みの日にひとりでずっと家にいることが本当は怖かった」とか、「今までのパパは仕事ばっかりしていて怖かった。今は全然違う」と言われたとき、そんなことを子どもに言わせた自分が情けなかったですね。今はそのことをちゃんと妻にも謝って、向き合っています。子どもと、人と人との部分で分かり合えたのはものすごく大きな変化ですね。
転職を考えている人にアドバイスをお願いします。
まずひとつには、自分にとっての仕事の本質は何なのかを考えてほしいですね。何のために働いているのか、それをどこで成し遂げたいのか、ということを考えてほしい。
もうひとつは、自分にとって大切にしたいことや価値観など、自分が何によって構成されているのかを、一旦立ち止まって考えてみるといいと思います。
これまで仕事で接してきた中で活躍している人は、論理的だなという印象の方が多かったです。でも、論理的思考の人は論理的だからこそ陥る要素もあって、例えば仕事とプライベートを分けて考えます、と言うけれど、今はワークライフバランスが重要視されて、その中間で考えないといけないし、そのワークライフバランスの中で何を優先していくのかであったり、それらの比率は人によって違うはずです。
二つに分けられるものではないのに、論理的ゆえに、実は視点の漏れ、本質の相違があるのだということを意識して、自分のことを振り返ってみることで分かってくることがあると思います。